語り部通信

周作クラブ会報 「からだ」番記者レポートA

遠藤さんからの電話

 

朝の10時、編集部の電話が鳴った。
「いま、山の上ホテルの食堂におるんだが、朝飯を食いにこないか」

主婦の友社は、山の上ホテルから数分の距離にあり、机上に「打合せ、帰社予定12時」とメモを残して、メインダイニングに急ぐ。「お早うございます」とご挨拶すると、読みかけの朝刊を閉じて「おう」と返事があり、朝食(私は早めの昼食)をご一緒する。
原稿締め切り「缶詰め」明けで、少々お疲れぎみだがご機嫌はまずまず。食後のコーヒーも含めて30分ほど雑談して、「それじゃあ、ご苦労さん」と遠藤さんは新聞を手に部屋に戻られた。
無類の寂しがりや、なのである。

仕事の合間に、M歯科医院で治療中、編集部から至急連絡をとの電話。すぐに治療を中断して、待合室の公衆電話から遠藤さんの事務所に連絡する。
「口の中に白いものがあり、白板症(はくばんしょう)の疑いと言われた。舌がんかもしれない。すぐ調べて連絡してくれないか」
電話口の声は、心なしか重く沈んでいる。むし歯の治療は中止して、編集部にとんぼ返り。何人かの専門医に電話で白板症と舌ガンについて尋ね、遠藤さんにその結果を電話で報告した。その後の検査で、舌ガンの疑いは杞憂に終わったが、かつての肺結核、糖尿病、高血圧、肝臓病……など、遠藤さんはいつも病気とともにあった。

「来月、新潟県の講演に行くのだが、円座クッション係になってくれんか」
南魚沼郡大和町立ゆきぐに大和総合病院での講演に向かう遠藤さんは、痔の手術を受けたばかりで、長距離移動には円座クッションが必須アイテム。かくて、からだ番記者の出番となる。
その前年(1982年)、讀賣新聞夕刊に連載された原稿『患者からのささやかな願い』をきっかけに、「心あたたかな医療」キャンペーンが始まり、とくに病院・医療関係の講演依頼には最優先で応じていたのだった。
遠藤さんは講演後の懇談でも「心あたたかな医療」について語り、先進的な地域医療(病院・保健センター・特別養護老人ホームを併設)を推進する黒岩卓夫院長も「健康やまとぴあ」構想を語る、すばらしい一日になった。

遠藤さんからの電話。真剣勝負!